イジワルな彼と夢みたいな恋を?
私がこのオフィスで働いてると知ってるんだろうか。
同窓会では喋ってないと思うけど、酔った後の記憶だから定かでもない。


(もしかして…とは思うけど偶然!?それにしては、余りにも出来過ぎてる……)


「…これから色々と宜しくお願い致します」


いつの間にか彼の挨拶は終わってた。
ボンヤリとしたまま、周りにつられるように拍手する。


壇上を降りていく背中を目で追いかける。
私の部署が、彼と直接触れ合うことも少ないけど…。


(まさか、こんな場所で再び会うなんて…)


散らばり始めた人達の中に佇み、もしもビルの中で彼とすれ違ったらどうしようか…と考える。

同窓会では散々悪態も付いたし、そもそも酔っ払ってたからまともな事を喋ってない気がする。



「どうした、太田さん。戻るよ」


ついて来ない私を気にして主任の高木さんが振り返った。


「あ…はい…」


歩みだした足先を止めたのはあの声で……



「太田美晴!」


ギクッと背中が反り返った。
よもやこんな場所で、大声で叫ばれるとは予想だにしなかった。



(この男は相変わらずだ…)


そう思いながら振り返ったら、声の主は既に側に近寄ってて。



「ワッ!」

「ヒィッ!!」


子供の頃と同じように驚かされた。
高そうな品のいいスーツに身を包んだ奴が、誇らしそうな顔を見せて笑ってる。




< 27 / 166 >

この作品をシェア

pagetop