イジワルな彼と夢みたいな恋を?
茫然と見つめる先にいるのは、王子様スマイルを浮かべる男と、その周囲には女らしい格好をしてる女子達の群れ。


「何?太田さん、彼と知り合い?」


後ろから声をかけてきたのは主任。
その声に頷きを返し、「中学時代の同級生です」と教えた。


そう。飽くまでも私と彼はそれだけの関係。
再びスタートが切られたとしても、時があの頃のように重なり合う訳じゃない。


「戻りましょう。主任」


踵を返して離れだした。

背後に彼の存在を感じながら、どうか今後は会わないように…と願った。


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部署に戻れば、ゆとりちゃん達は寄り集まって会話中。


「お帰りなさ〜い」


間延びした声を出すのは、加藤歩美(かとうあゆみ)ちゃん。
通称「アユちゃん」と呼んで下さい…と、自分から喋った子だ。


「どうっした?新しいデザイナーさんは?」


背だけは一人前に高いのが橘航平(たちばなこうへい)くん。
話し方が高校生みたいで、精神年齢も同じくらいだろうと思われる。


「オレ、知ってるんらー。結構イケメンなんれすよねー」


アレルギー性鼻炎だと話し、鼻詰りの様な声を出すのは舛本大毅(ますもとだいき)くんという。
いつも薬の所為だと言い訳をしながら、暇さえあればダルそうに机に伏せてる輩。


「イケメン!本当ですかぁ?」


アユちゃんの食いつきの早いことと言ったら。


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