イジワルな彼と夢みたいな恋を?
「うん、まぁイケメンだったよ」


主任、そういう情報は流さなくてもいずれ直ぐに流れるから。


「イケメンならオフィスの女子にはウケがいいっすね」

「もう既に囲まれてたよ」

「あーあ、いいらー。イケメンはモテて」

「大ちゃんはその鼻炎が治らないと難しいねぇ〜」


ケラケラと愉快そうに話す彼らの話に取り合わず、私は自分のデスクに着いた。


「そう言えば、新しいデザイナーさんと大田さんて、中学時代の同級生らしいよ。親しそうに話なんかもしてたしね」


ギョッとする様なことをいう主任の口を思わず押さえ込みたくなった。


「うわー、マジっすか!?」

「イケメンデザイナーと同級生なんて羨ましい〜〜!」

「で?で?何の話をしたんれす!?」


(聞き出すよりも先に仕事やんなよ!)


ブチッとキレそうになるのを堪えた。


「何のって、別に普通の挨拶をしただけ」


違うけどね。


「昔からイケメンだったんですか〜?」

「ああ、うん」

「いいなぁ。今度会ったら私にも紹介して下さいよぉ〜」

「……うん、会ったら…ね」



(二度と会いたくもないのに冗談じゃない!)


心で怒って仕事に向かう。
頭の中では冷静になろうと思うのに、心臓の動きが何だかおかしい。


壇上に上がってる姿が瞼から離れない。

側にいた奴の体温を思い出すと、自分の体温も上がりそうになる。


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