イジワルな彼と夢みたいな恋を?
誰かがいる方が恐ろしいと思う瞬間がある。
エレベーターのドアが開いた時、人の影が見えたらゾクッとする。



チン!

幸いなことに一人きりのままで一階に着いた。
ぎゅっと肩に掛けたバッグの持ち手を握りしめて外へ出ると、賑やかに話し込んでる人達の群れが見えた。


(あれは…営業部の連中?)


こんな時間まで残ってるのは、仕事を抱え込んでる私か外部へ営業に回る人達くらいのものだ。



「お疲れ様でした」


声をかけながら側を通り過ぎようとした。



「あっ、太田美晴!」


待てよ…という声に驚き、くるっと後ろを振り返った。


「お前も今帰りか?」


爽やかなスマイルを浮かべながら寄ってくるイケメン男子。


(そう言うあんたは初日からこんな時間なの!?)


そう思いながらも愛想笑いをして見せる。


「そうよ」


お疲れ様…と一応大人な態度で接した。


「今から帰るんなら一緒に飲もうぜ」

「(誰が!)…嫌よ」

「何で。いいじゃん」

「冗談!いいことなんて無いし」


私と彼が言い合ってる姿を彼の背中越しに見てる営業部の面々。

多分きっと驚いてるんだろうと思う。
私が彼に悪態ばかりを吐いているから。



「何だ〜、お前達。知り合いなのか?」


営業部のうちの一人が話しかけてきた。
顔だけは知ってるけど、名前までは知らない人。


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