イジワルな彼と夢みたいな恋を?
戸惑う私の背中から声がした。


「まぁまぁ、もういいじゃないか。全員仕事の大切さを思い出したようだし、そろそろ次のステップに進もうや」


場を和ませるように岡崎さんが明るい声で取り成した。
私は困ったように微笑みかけ、三人に小さく頷き返した。


ゆとりちゃん達はホッとした様に笑った。
でも、私は芯から彼らのことを信じていない。


あのゆとりぶりが急に進路変更するとは思ってない。
今は一ノ瀬圭太に出て行ってもいいと言われて、意地を張ってるだけかもしれない。




(でも……)


ちらっと上座に目を移した。

指示棒を伸ばしながら目の合った人は、紛れもなく私の気持ちを代弁してくれたと思う。



『どんなに優秀な人間でも助けて欲しくない訳じゃない…』



うん。そうだ…。



(……私はずっと、一ノ瀬圭太に助けて欲しいと思ってた……)



学生の頃を思い出して、涙が溢れそうになって俯いた。

弱い自分を見せないよう、その後は必死で笑顔を作り続けたーー。




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