イジワルな彼と夢みたいな恋を?
(……私、どうかしてる…?)


ずっと追われるようにやってきた仕事なのに、今は自分から進んで追い求めようとしてる。

この感覚は最近にしては珍しい。
まるで、資材部管理課に異動してきた頃のようだ。


あの頃は右も左も分からないまま、ただ闇雲に頑張ってた。
高木主任も親身になって指導してくれて、それでここまでになれた。


(…あの時の私も、今のゆとりちゃん達と同じ立場だった……)


そう思うと足が止まった。
いつの間にか私は、自分一人で成長した様な気になってた。



(そうじゃなかったんだ……)


高木さんが私を怒りもせず、ひたすらに褒めてくれたからこそ伸びてこれた。

私はあの時の高木さんのように、三人のことをどれだけ褒めてきただろうか。



(ううん。きっと褒めてない…)


愕然としながら思い出した。
ずっとお尻を叩いてばかりで、褒めたことなんてなかった気がする。


(それじゃ、やる気も出せないよね…)


そうでなくてもゆとり世代の三人組だ。

褒めてあげないとどうにもモチベーションなんて上がらないし、維持だってずっとはできない筈。


(今日から高木主任を見習ってみようか)


全く同じにはきっと出来ないと思うけど、彼らの良いところを見つけて褒めていってやろう。


「それから先ずは、基礎資材のメーカーさんに問い合わせて、屋根とタイルは後回しにしよう!」


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