イジワルな彼と夢みたいな恋を?
「納期には必ず間に合わせるよ」と約束をしてくれて、私は「よろしくお願い致します!」と、電話の向こうにいる相手に頭を下げた。


とうとう始まるんだ…と思うとワクワクしてくる。
この気持ちを誰かと分け合いたいという衝動に駆られ、キョロキョロと部署内を見回す。



(でも、誰と…?)


皆はそれぞれに自分の仕事を続けている。
以前のようなダラダラしてた雰囲気も無く、真剣そのもののようだ。


(ここで燥げば、以前のゆとりちゃん達と同じか…)


流石にそれはちょっとできないな。



「すみません。…ちょっと席を離れてきます!」


スマホをポケットに押し込み、そそっと管理課のドアを開けた。
そのまま休憩室へと足を運び、自販機前に置いてあるソファに腰掛ける。


今、自分が話したい相手はあいつしか浮かんでこない。
でも、出てくれるかどうかは謎。



「う~ん…」


ソファに腰掛けたまま悩む。
一ノ瀬圭太の番号は、前にかけた時に登録済みだけど。




(……ダメだ。ワンクッション置こう)


構え過ぎてかけれず、結局、無難に話せる相手に連絡した。






「もしもし、絵里?」


同郷の親友の番号にタップにし、コールが鳴ること四回目で彼女が電話に出てくれた。


「美晴!?どうしたの?」


地元の役所に勤めてる絵里は、ガタン…と椅子から立ち上がったような音を響かせた。


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