イジワルな彼と夢みたいな恋を?
「ちょっと誰かと話したくて。今いい?」

「…いいよ、ちょっとトイレに逃げ込むから待って」


カッカッカッ…と小走りする足音が聞こえる。
役所は意外にも逃げ場所が少なそうだ。



「ごめんねー、何?話って」


手短にして欲しいようで、これじゃワンクッションにもならないな…と思う。


「うん、あのさ…」


私の話したモデルハウスが出来るのよ〜と言っても、「それが何?」で終わりそう。


「あのね、実は同窓会の後で一ノ瀬君に会ったの!私の働いてるオフィスで専属のハウスデザイナーをすることになってね」


今は彼がデザインしたモデルハウスの建設が始まったばかりだと教えた。


「私も資材調達とかで彼と何度か会ったんだけど、相変わらずモテるというかイケメンオーラが満載でさ…」

「そりゃそうでしょうよ。あの同窓会でも女子しか周りに居なかったじゃない」

「そうだけど、オフィスでも同じだから可笑しくて」


ちっとも可笑しくないけどそう言った。
絵里は目に浮かぶようだと笑い、「そう言えばあの同窓会での美晴の荒れ方は酷かったよね」と話し始めた。


「あんた、一ノ瀬君に絡んで大変だったのよー。転校していった後の恨みや辛みを散々彼にぶちまけて」


「えっ…」


まさか。


「一ノ瀬君に『謝れ!』って怒りだして、最後は泣き出しちゃってさー」

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