イジワルな彼と夢みたいな恋を?
夢にまで見たゴールは…
春、三月ーーー


桜の蕾が膨らみ始めた頃、卒業証書を手に母校を巣立った私達。
保護者や友人、後輩達と入り交じって言葉を交わし写真を撮り合った。


「またね」

「連絡してよ」

「たまには遊びに来て下さい」


キャーキャーと燥ぐ声の飛び交う中、あいつの姿がだけがそこに無かった。

この騒がしい中で、あいつと最後まで張り合いたかったな…と思い、酷く寂しいな…と実感したーーー。




「あんたの転校した後、私がどれだけ大変だったか知らないでしょう!」



多分きっとそう言って愚痴を零し始めたんだろうな…と思い浮かべる。
残ってる記憶の最後に、そんな思いを抱いてたから。



「それにしても『謝れ』プラスの『泣き』は無いか」


力の抜けたまま一人で残業してた。
絵里と話した後、ズルズルと足を引き摺りながら部署に帰ると、予算書を作成してたアユちゃんが顔を上げて。


「何サボってんですかぁ。大田さん!」


散々サボってきた人に言われたくないよ…と、口先まで出掛かった言葉を飲み込んだ。


「ごめん。やっとモデルハウスの建設が始まると思うとワクワクしてさ」

「全く、子供じゃないんですからお願いしますよ〜」


いや、そのセリフ、あんたに言われる筋合いないんだけど。


< 91 / 166 >

この作品をシェア

pagetop