イジワルな彼と夢みたいな恋を?
当時の私の辛み事を毎日のように聞いてくれた絵里には感謝をしてるし、彼女が居てくれたからこそ、学校にもずっと通えて行けた。


同窓会があると聞いた時、絵里が行くと言うから行こうと思った。
そうでなければ、絶対に行かなかったと思う。



(つまりはそれ程嫌だったんだよね。あの中学の三年間が…)


それもこれも一ノ瀬圭太が急に転校なんかしたからだ。

せめて皆に一言別れの挨拶をして、「これからも纏まって頑張れ」と言ってくれてたら違ってたかもしれないのにーーと思い続けた。


そんな考えがずっと頭の中にこびり付いてた。
神にでも縋るような気持ちで、一ノ瀬圭太の残像に縋ってたーー。



……あの卒業式の日、証書の入った筒を片手に思った。


(このゴールを一緒に達成したかったな)と。

「あんたと張り合ってきて楽しい三年間だったよ」と、笑って話したかったな……と。



それは勿論夢でしかない出来事だったけど、高校でも大学でも、卒業式を迎える度にあのほろ苦い中学の卒業式を振り返った。


私にとっては、いつも一ノ瀬圭太が心の中に残ってた。

彼と一緒にゴールを迎えるのが夢だと思ってた。



(モデルハウスが出来上がった時、今度こそは一緒に楽しくゴールができるのかな…)



その時は、恨みや辛みを言わずに済むのかな。

一緒に仕事できて良かった…と笑って言えるのかな。


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