続*おやすみを言う前に

「ほんまにありがとう。気を付けて帰ってな。」

「はい。」


男は短く頭を下げると足早に出て行った。すぐにドアを閉めて鍵をかけた。

冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、麻衣子の元へ戻る。

あー、こうなっちゃうとどうしようもないんよな。酒に飲まれた気持ち悪さは時間が経つことでしか解決しない。俺も酒を飲み出した頃は時々無茶をしてこうなった。


「麻衣子?吐く?」

「んー……。だいじょ、ぶ。」

「水飲む?」

「んー。」

「ちょっと起こすで。」


横向きに寝ている左肩の下に腕を入れ、抱えるように半身を起こした。

めくれたブラウスの裾から、白い肌が覗く。

蓋を開けたペットボトルから、麻衣子はゆっくりと水を飲んだ。流れっぱなしにしていた映画はエンドロールになっていた。
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