続*おやすみを言う前に
「大丈夫だよ。私連れ込まれる程モテないって。」
ああーもう。なんでこいつはこんなに無自覚なんやろ。
恋愛経験ないのは知っていたけれど、あんまりにも鈍感過ぎて時々もどかしい。自分の笑顔がどんなに可愛いかわかってない。
「ちゃうねん、俺みたいなジェントルマンな彼氏持つとわからんやろうけど、男なんてみーんな隙あらば襲ったろと思ってんねん。」
「拓馬がジェントルマン?」
「せやろ。」
「ええー。」
「えー、やない。男のことは俺のがよくわかってんの。その上で言うてんの。」
カッコ悪いから絶対言わないけれど、東京と大阪の遠恋時代、麻衣子の家に泊まってるのに軽いキスのみだったことが、どれだけしんどかったか。
急かしたくはなかったし、ちゃんと麻衣子が心も身体も許してくれるのを待ちたかった。その気持ちに偽りはないが、裏腹に欲が溢れるのを必死で堪えたこともまた真実。