続*おやすみを言う前に

「アイスあーんくらいで誤魔化されへんからな。」

「バレた?」

「上目遣いしてもだめやで。」


見透かされてる。拓馬は意地悪な顔でにこっと笑った。

拓馬の方に向くのをやめて、再びソファーを背もたれに座り直す。テレビではサッカーの試合が流れている。


「どうしてそこにこだわるの?」


友達ともそういう話はしたことないし、世の中の女の子は皆どうしているのだろう。肉食系女子って言葉もあるし、自らアタックしたりオトしたりする女の子もいることは知っているけれど。

知っているだけで、実際のところどうやって、どんな風に行動しているのか。


「麻衣子をイジめんのが楽しいからかな。」

「意地悪。」

「冗談や。なんでって、そうやなあ、俺ほんまはドMやから攻められたい。」

「変態!」

「嘘やん。なんちゅーか、もっと麻衣子が心開いてくれたらええな、ってとこやな。」


お、ゴール!とサッカーの試合に集中を移した拓馬をよそに、私はちょっと考え込んでしまう。

充分に心を開いているつもりなんだけどな。最初から閉ざしたことなんかない。誰より信頼しているし甘えている。


「開いてるのに、すっごく。」


日本に点が入って喜んでいる選手や観客たち。私の口調は拗ねたようになってしまう。
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