続*おやすみを言う前に

しかし、今日は疲れた。

リビングの電気を付けてソファーになだれ込む。キッチンに積み上がった皿がちらりと目に入る。今朝より更に高くなっている。

あー、もう。

なんか苛々してしまいそうな自分が嫌になる。

皿くらいちゃっちゃと洗ったったらええねん。とは思うのだけれど、スーツに染み込んだ疲労が強力な接着剤になってソファーから立ち上がれない。

昨日も一昨日も洗い物と洗濯は俺がやった。先週あたりから、夕飯は簡単な炒め物系から出来合いの惣菜にシフトしていった。

あー、ちゃう、ほんまちゃうねん。麻衣子にイラついとる訳やないねん、けど。追い込み時やって、家事してる時間あったら勉強したいって、わかっとんのやけど。

明日も早起きせなあかんし、今週から急に忙しくなったんは取引先の新人の発注ミスのせいやし、けどそれも新人の上司の確認不足でもあるし、そもそも誰やってミスすることはあるんやし、俺がもーちょい気ぃ回せたら防げたかもしれんし。

タイミングが、タイミングだけが悪かった。

仕事がそんなに忙しくない時だったら余裕で家事代わって好物でも食卓に並べて、あと一息がんばれ!、て麻衣子のこと笑って応援出来たのに。

「おかえり」がないのも、まともに会話もしていないのも、そもそも顔すらちゃんと見ていないのも。
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