続*おやすみを言う前に
真面目なのは麻衣子の良いところだ。間違いない。
しかし時々、もうちょい肩の力抜いたらええのになあ、とも思う。
料理好きということもあるだろうが、麻衣子の料理は市販のタレやソースをほとんど使わない。ミートソースも青椒肉絲も五目ご飯も、一から手作りをしてくれる。
「洗濯は溜めとこ。で、来週の休みにでもコインランドリーのでっかい洗濯機と乾燥機で一気に片付けよ。掃除は一週間くらいせんでも死なへんやろ。」
どうやら金銭面を俺が多く負担していることに多少なりとも引け目があるらしい。
倹約してくれるのはええ奥さんになりそうやんなあ、とにやける反面、ちょっとのお金で解決できるとこは解決しようや、とも思う。
そら高給取りではないけどさ、二人分くらいは稼いでるっちゅーに。
「うーん。」
「気乗りせえへん?」
「うん、それでいいのかなって。」
申し訳なさそうな表情が彼女らしい。付き合いはじめの頃は、なんでこの子はこんなに頑なやねん、とよく思ったものだ。
けれど多くの時間を過ごすうちに、それは壁ではなくて、それが麻衣子の人との向き合い方であると知った。
見ようによっては不器用なんだろう。面倒くさいと、もっと無自覚に寄りかかってくる女の子がいいと、思う男もいるだろう。
しかし、もうすきになってしまったから。そこひっくるめて抱きしめる。