続*おやすみを言う前に

「まったく、気にしすぎやねん、麻衣子は。今は緊急事態っつーことで家事なんか思っくそサボったったらええんやって。」

「うん、わかった。ごめんね。」

「そういうときは、ごめんやなくて?」


際限なく甘えられないというなら、ここまで、と引いた境界線を徐々に広げるだけ。それは俺の腕の見せ所だろう。


「ふふ、ありがとう。」


やっと麻衣子がらしく笑って、こっちまで幸せな気分になる。

あんな、ワイシャツにアイロンかけてくれんのも冷蔵庫のビールを切らさないでいてくれんのも目新しい料理が食卓に並ぶんも嬉しいけど、一番嬉しいのは麻衣子が笑ってることやねんで。ちっちゃいことでゴタゴタするくらいなら、ちょっとお金使って楽して、麻衣子が笑ってるくれんならそれでええよ。

そう言ったら、麻衣子があからさまに照れた顔をするから、何可愛い顔してんねん襲うぞ、とツッコんだ。
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