続*おやすみを言う前に
「顔赤いやん。酔っ払ってるん?」
「ちょっとふわふわする。」
「気持ち悪ない?」
「うん、大丈夫。」
拓馬の声は不思議だ。低くて穏やかで心地よい、包み込まれているよう。拓馬の、というより、すきな人の、なのかな。
アルコールで鈍くなった頭でぼんやり思っていたら、キス。
柔らかさとほんのり残る甘いワインの香りに、全身の力が抜ける。長いキスをしたまま、ゆっくりと背中がベッドに付けられて、拓馬が上になった。
「たまには電気消さんでいい?」
「いや。」
「今更何を恥ずかしがんねん。」
「でも、いや。」
わがまま姫やー、と言いながら拓馬の伸ばした手で間接照明が消された。
網戸にした窓からカーテンをすり抜けて、夏夜の風が舞い込んだ。