続*おやすみを言う前に

「あれ、そんだけしか食べへんの?」

「うん、お昼遅かったから。」


二キロ増に気付いてから約一週間。

毎晩お風呂上がりに体重計に乗ることを続けているけれど、五百グラム範囲で細かい増減があるだけで体重は一向に減らない。

夜ご飯は少なめにしてるし、駅や大学では階段を使うように心掛けているし、毎日暑い中大好きなアイスも我慢してるのに。


「おー、今日は生姜焼きやん。」


拓馬の前にはキャベツの千切りとトマトを添えた生姜焼き、イカのワタ焼きと冷奴、ご飯は大盛り。私の分は全体的に拓馬の半分くらい。

いただきます、と揃って食べ始める。

このところ天気予報は毎日のように、今年の最高気温です、と告げている。夏なら汗をかくから痩せやすいと思ったのにな。一週間で結果を求めるのは尚早かな。


「めっちゃ美味い。」

「ほんと?よかった。」


一口が大きい拓馬の食べっぷりは気持ちがいい。大食いだねえ、と付き合い始めに言ったら、そう?中高生の時は倍食べてたから最近少食になったと思ってたわ、と返ってきた。

いっぱい食べてくれると料理も作り甲斐がある。農家の大家族育ちの私はついつい量を多く作りすぎてしまうのだけれど、おかげで余って捨ててしまうことはない。

拓馬が彼氏でよかったな。

ふとした瞬間に時折思う。たぶん、何千回何万回と思っている。

この生活がずっとずっと続けばいい。そのために拓馬にずっとずっとすきでいてもらえるよう、この気持ちを失くさない。

< 49 / 98 >

この作品をシェア

pagetop