続*おやすみを言う前に

「帰るか。」

「うん。」


ガリガリ君の袋を開けた後、拓馬が私の左手を取ったのを合図に歩き始める。

私の左手はいつもいつも繋いでいるうちに、拓馬の右手に収まるように形を変えたみたいだ。隙間なくぴったりとくっついている。


「食べにくいでしょ?荷物持つよ。」

「ありがとう、こっちだけ持っとって。」


DVDの袋を受け取る。ポテチの入った袋は拓馬の左腕に引っかかったまま。そっちも渡してくれていいのに、とか言ったら、男の美学や、とかよくわからないことが返ってくるんだろう。拓馬らしい。

すると、三分の一程減ったガリガリ君が目の前に差し出された。


「はい、あーん。」


一口ならいいか、と自分に言い訳して端っこを齧る。ソーダ味の氷はみずみずしくすぐに溶けた。


「こんなんしてたら、ちょっとはデートっぽいやろ?」

「そうかなあ。」

「そうやって。はい、あーん。」


再びアイスが目の前にやってきた。


「もう、大丈夫。」


一週間アイス断ちをしているのに、二口目を食べてしまったら、意志が揺らいでしまいそう。

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