続*おやすみを言う前に
「太ったのそんなに気にしてるん?」
「えっ。」
耳を疑う発言に、思わず足を止めて拓馬の方を見た。
「私が太ったの気付いてた?」
拓馬は振り返るように一歩先で止まった。
「毎日一緒におったらだいたいわかるやろ。俺が気付いとらんと思ってたん?」
まさか。まさかまさか。バレていたなんて。
体重計に乗るまで自分でも気付かなかったくらいだから、拓馬が気付くはずないと思っていた。
再び歩き始めながら、どうしても目線が下になる。
「そんなにわかるくらい太った?」
「そんなんでもないけど、毎日見たりさわったりしとるから、ちょっとふっくらしたかなあ、くらいは思ってたで。」
「……なんか言い方やだ。」
「またやらしい言い方すんなーとか言うんやろー?」
拓馬は私の気持ちも知らず、楽しげだ。
そりゃあ、男の人にとっては体重の二キロ増なんて瑣末なことなんだろうけど。女の子にとって、少なくとも私にとってはショックだ。
「それに。」
「それに?」
「食事も減らしとるし、大好物のアイスも食べへんし、俺やなくても気付くで、あれは。」
「そうかもしれないけどさあ。」