続*おやすみを言う前に

耳が熱い。頬も熱い。数ヶ月前、私に女の子としての魅力が足りないんじゃないかと悩んでいた。だから、拓馬の飾らない発言は嬉しいんだけど、だけど。

にっこり笑って余裕綽々で受け取るには、私は拓馬がすき過ぎる。


「まあ、どんな麻衣子でも麻衣子やねんからさ、痩せたいて思うのはええけど、無理はあかんで。」

「うん。」

「これから毎日暑いんやし、ちゃんと食べんと、いつかの時みたいに貧血なったら心配やからな。」

「うん。」

「わかったんやったら、はい、最後の一口。」


マンションの入口に差し掛かったところ、一口大になったアイスが口元に。


「早よせんと溶ける。」


木の棒の先から溶けたアイスが溢れてきそうで、言われるがままぱくっとくわえる。

冷たくて、おいしい。熱くなった頬や耳を冷静に戻してくれる。
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