続*おやすみを言う前に

「乾杯!」


ジョッキを合わせて小気味良い音を響かせ、半分程を一気に飲み干した。

駅前の居酒屋は仕事終わりのサラリーマンで溢れている。昼間の暑さが染み付いたワイシャツのボタンを一つ外しアルコールを流し込む輩が、あちらにもこちらにも。


「いやー、やっぱ仕事終わりのビールは格別やな。」

「ははっ、おまえもオッサンになったな。」

「お互い様やろ。」


平日の仕事終わり、大学時代のサークルの同期である村木と顔を合わせるのも一ヶ月ぶりくらいか。まだどちらも独身とはいえ、学生時代と比べると飲む回数も量も減っている。

学生の頃を時代と呼べる時点でもう若くない証拠やな。


「そうだ、さっき後輩からメール来てさ、来週金曜にサークルの現役OB集めて男だけの飲み会するらしいんだけど。」

「何やそれ、むさ苦しそうやな。」

「来る?」

「女の子おらんなら行こかな。」

「なんだよ、麻衣子ちゃんに束縛されてんの?」


村木が笑いながら胡瓜の一本漬けをぽりぽりと噛んだ。俺と麻衣子の出会いの場にいたしその後も何回か会っているので、村木も麻衣子のことを知っている。
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