続*おやすみを言う前に
「ちゃうけど、下手に惚れられても面倒やしさあ。」
「は?暑さで頭やられたか?」
「ちょっと言うてみたかっただけやん。」
男だけのが気楽やなと思っただけやで、と続けると、まあそれは分かる、と返ってきたところで軟骨の唐揚げと枝豆が運ばれてきた。
「でも拓馬がそんなこと言うなんてな、丸くなったじゃん。大学の時は彼女いても合コン行ってたのに。」
「おい、おまえそれ絶対麻衣子に言うなよ。」
「考えとく。」
「言うとくけど、麻衣子と付き合うてからは一回も行ってへんし、昔も合コン行ったことはあっても浮気は一切してへんからな。」
「そうだっけ?」
涼しい顔でお通しのナムルを食べながら言い放ちやがる。食えない奴だ。大学時代の女関係はほぼ知られているのが何とまあ都合の悪い。
どんだけ彼女がすきかーなんて、男同士でそんな気持ち悪い話ようせんからしゃあないんやけど。俺、麻衣子のことはめっちゃ一途やっちゅーねん。
「あ、でもおまえ後輩から恨まれてるよ。飲み会来るなら責められるのは覚悟しとけ。」
「は?何やそれ。身に覚えがないんやけど。今まで何も言われてへんし。」
「それは他の女の子もいたから言わなかっただけで。」