続*おやすみを言う前に
麻衣子がいないので、大人のDVD……というのは冗談で、普通に映画のDVDを鑑賞しながら手酌でちびちびと。
一人暮らし歴もそこそこ長かったし、一人でいることには慣れている。しかし、一人の家に一人でいるのと、二人の家に一人でいるのとは、何かが違う。
未完成で不完全な感じ。麻衣子がいる部分がぽっかりと空いている。
そういえば最近は一人の時間が欲しいだなんて思うこともなくなっていた。それは麻衣子が束縛しない丁度いい距離で付き合っていてくれているからでもあるし、麻衣子が同じ空間にいることがあまりにも自然だったからでもある。
「寂しがり屋になったんかなあ、歳やろか。」
今日はいつもより麻衣子のことを考えていた時間が長くて、この頃ちょっとずつお酒を嗜み始めた麻衣子に、今夜は日本酒の旨さを教えてやろ、なんて浮かれていたから。
時刻は十一時半。そろそろ帰ってくるだろうかと思って、『駅着くころ連絡してやー迎えに行く』と短くメールを打った。
この辺りは治安がいい方だけれど、夜中に女の子一人で歩かせるのは何かと心配だ。例の事件もあったことだし。
お父さんみたい、と時々冗談めかして言われる。まあ、六コも下だから、そういう庇護欲もあるんやろな、と自己分析している。