続*おやすみを言う前に

「暑い?寒い?」

「ようわからん。頭は熱いんやけど。」

「大丈夫?」

「そんなたいしたことないで。」

「クーラー入れようか?」

「うん。」


言葉とは裏腹に辛そうで。付き合って二年近く経って初めて、こんなに風邪をひいている拓馬を見た。

洗濯物を手早く取り込んでいると、体温計の音がピピッと鳴った。


「何度?」

「三十七.六度やって。」

「やっぱり熱あるね。」


ぐちゃぐちゃのまま洗濯物を放り込んで窓を閉めて冷房のスイッチを。

体調悪くても食べられそうなもの何かあったかな、何か食べて薬飲んで頭冷やして寝るのが一番いいだろうな、とぐるぐる考えを巡らせる。


「風邪薬あったっけ。」

「たぶんあると思う。」

「薬飲んでさっさと寝るわ。適当に寝とったら治るやろ。」


くしゅん、と意外に可愛らしいくしゃみをしてふらふらと起き上がった拓馬は鼻をかんだ。ゴミ箱にティッシュの山が出来ている。

鼻声には覇気がなくて、なんか、ふと、守ってあげたい、と思った。
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