続*おやすみを言う前に

「だめだよ、薬だけじゃなくてちゃんと食べなくちゃ。」

「あんま食欲ない。」

「お粥なら食べられそう?」

「んー、そうやなあ、卵のやつなら。」

「わかった、卵粥ね。」


いつもしてもらってばかりの私が、してあげられることがある。不謹慎かな、ちょっと張り切ってる。


「出来たら呼ぶから寝てて。ちゃんと着替えてからね。」

「なんか今日奥さんみたいやな。」


またひとつ、くしゅん、とくしゃみをした拓馬はそう言い残して自室に入っていった。

奥さんみたい。その単語がくっと胸に刺さる。

どの辺をそう思ってくれたのかわからないけれど、嬉しい。前にちらっと将来の話をしたことを覚えているのかな。いつかそうなれたらいいな、と私は夢見ているよ。


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