続*おやすみを言う前に
* * *
「拓馬?お粥出来たよ。」
数回肩を叩くと、拓馬はほんのり赤い顔の瞼を開けた。額には汗が数滴にじんでいる。
「うわ、普通に寝てた。今何時?」
「六時半くらい。気分どう?」
「んー、だるい。」
「少しは食べられそう?」
「うん、麻衣子が作ってくれたからな。」
ゆっくり起き上がった拓馬は鼻声が辛そうだ。ふれた肩もやっぱり熱い。熱が上がっていないといいんだけどな。
「お粥持ってきたけど、どうする?向こうで食べる?」
「なんや、あーんしてくれるんやないの?」
鼻声と相まって甘えたように響いた一言。
可愛くて、なんかずるい。風邪をひいて寝込んでもなお鷲掴みするなんて、なんかずるい。
「冗談やで。麻衣子にうつしたらあかんし、こっちで自分で食べるから貸して。」
ずびずびと鼻をかみながら、脇に置いていた器とスプーンを奪われる。
「大丈夫だよ。このくらいでうつらないよ。」
「絶対やないやろ。塾で麻衣子のこと待ってる子もいっぱいおるし、試験の結果発表やってもうすぐやん。」
「でも。」
「大人やねんから大丈夫やって。向こう行っときや。」