続*おやすみを言う前に

拓馬はこういう人だ。私を一喜一憂させながらも、結局いつも自分のことより私のことを思いやってくれている。具合悪い時でさえ気遣うのは私のこと。


「わかった。」


でも、私だって返したい。思いやってもらうばかりじゃなくて、思いやりたい。

弱ってる時くらい甘えていいのに。負担なんてないし、むしろもっともっと愛しくなるだけなのに。そういうところ、ばか。

花粉症の拓馬が春に大量に買ってきたストックを引っ張り出す。もう一度拓馬の元へ。


「マスク?」

「私にうつすとか余計なこと気にしてるから。これで大丈夫でしょ。」


ベッドの端に腰掛けて、拓馬から器とスプーンを奪い返す。まだ湯気の立つお粥を一口分すくって口元へ持っていくと、拓馬はふっと笑った。


「変なとこ意地っ張りやな。」

「早く食べて。」

「ふーはしてくれへんねんな。」

「マスクだもん。」


拓馬は自分でふうふうと冷ましてから一口目を食べた。誰かにあーんするなんて初めてで、ちょっと照れくさい。
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