続*おやすみを言う前に

「ん、美味い。」

「よかった。」


完食した拓馬に薬を飲ませて、おでこに冷却シートを貼った。これ冷たくてめっちゃ気持ちええ、と言われて、買いに行った甲斐あったなと思う。


「早く治るといいね。」

「月曜までに治すで。木曜から有休で休むのに、月曜休む訳にいかんやろ。」

「そんな早く治る?」

「二十八をなめんなよ。」


少しは元気をあげられたのかな。口数が戻ってきた姿に嬉しくなって笑った。

さっき熱を計ってみても三十七.四度でほとんど変わっていなかったけれど、少しはいつももらっているものを返せたかな。


「ゆっくり休んでね、おやすみ。」

「おやすみ。」


旅行も楽しみだけれど、そんなの二の次。

拓馬が風邪をひいたらもちろん何度でもお粥作るし、ポカリ買ってくるし、看病する。でもそれより、いつも元気でいてほしい。拓馬が辛いのは私も嫌だから。

冷めたミートソースを温め直しながら、改めてこの恋の大きさを思い知る。

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