続*おやすみを言う前に

真っ青な空が眩しいくらい。快晴に恵まれた幸運と旅行の高揚感に、ついアクセルを踏みすぎてしまう。


「次のサービスエリアで休憩しよっか?」

「うん、そうだね。」


助手席の麻衣子はいつも以上ににこにこしている。彼女がご機嫌だとこっちまで気分がいい。

七月最終の木曜日。溜まっていた有給休暇を消化するために今日と明日は休みを取り、一泊二日の箱根旅行だ。

冷房がキンキンの車内とは打って変わって、外は日差しがギラギラと光り、目だけでうんと暑いのがわかる。まさに夏真っ盛り。


「次運転代わるよ?」

「ええよ。ペーパーやろ?」

「実家に帰った時は運転してるもん。」

「たまにやん。」


新幹線やロマンスカーという選択肢もあったのだが、今回はレンタカーで行くことにした。

たまには麻衣子にええとこ見せとかんとな。自慢じゃないが運転には少しばかり自信がある。


「拓馬だって普段車乗らないじゃん。」

「仕事でたまに運転しとるし、大阪におった時は外回り全部車やったし。」


都内に住んでいると車は必需品ではないので、運転する機会もほぼない。麻衣子を助手席に乗せたのも、一緒に俺の地元に帰った時くらいだ。
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