神様っ!!
カラー剤で染めた髪を、柊の手際のいい優しい指が洗っていく。

細い髪も絡むことなく、洗い上げられてタオルを巻かれカット台まで戻ってくる。

黙々とドライヤーでブローされ、風が邪魔で話すこともためらってしまう。



「ここからがメインだから。カラーなら誰にでもできるって訳じゃないけど、幸に似合うカットは自分にしかできないから」

自信ありげな柊はコームと鋏を取り出して、鏡越しににやりと笑った。

「ずいぶん自信があるみたいだよね」

「そりゃあね。美容師になると決めてから、幸の髪を切ることだけを楽しみにしてきたからね」

「なんであたし?カットモデルなんていくらでもいるでしょうに」

インスタグラムやフェイスブックでカットモデルの募集を見ることがある。数をこなせれば練習になるし、お店の情報をあげてもらえたら集客にもなって一石二鳥だ。

柊を見上げた顔の顎を引かれて、位置を直される。
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