神様っ!!
「お前が、なんにも知らないだけ。わかんないんだか、気づかないんだか」

ため息と呆れ声。

「ずっと切らせてくれって言ってた」

「だってこの店ってハードル高いじゃない」

パチリと鋏が鳴って髪が落ちる。しゃっと迷いなく鋏が滑る。

「ここが嫌なら、どこでだっていいって言ってたのに切らせてくれなかった」

決まっている動作をオートマチックにしているかのように、全く迷いがない。頭と指が繋がっていて、思い描いた通りに寸分違わずカット出来ているようだ。

「……普段の柊からは、ちっとも想像つかなかったんだもの」

「真面目に仕事してるのにな」

「一番遠いとこにいると思ってた」

「そんなことない。仮にもこれが一生の仕事だと選んだものなんだから」

チャラチャラしてたりとか、フラフラしてたりとか、浮わついたイメージでいたのに……

なのに

真面目で真摯に仕事に向き合う柊を見てしまった。
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