神様っ!!
「………まあ、いいんじゃない」

「幾つも出来るほど器用じゃないから、せめて一つくらいはなんとかしないとね」

鏡の中の柊は、すこし口の端が上がった。

誰かに言われてすることじゃない。

自分で選んで、決めたから真面目に向き合うことができるんだ。

「前髪を切るから、目を閉じてて」

目を閉じると、さらさらと雪が降り積もるように、髪が落ちる音がする。

口を開けたら髪が入るから、鋏と切り落とされて落ちる髪の音しかしない。

柊も集中しているのか、話しかけてこないのでさらさらとした微かな音だけが部屋に満ちていく。
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