【完】『けったいなひとびと』
このハガキを読んださやかは、
「ちょっと伊福部くんに来てもらえないかな」
と言った。
酒や麹を扱う人の肌がきめ細かいのを覚えていたからである。
数日後。
駿が呼ばれた。
「ご無沙汰しております」
ひさびさに見た駿は、すっかり酒屋の当主の顔になっていた。
「麹を化粧品に使いたいんだけど」
というプランを明かすと、
「それなら良い蔵元がいてますから紹介しましょう」
と言い、駿の取引先である伏見の酒蔵に渡りをつけてくれた。
何日かして。
さやかは駿の案内で伏見の蔵元へ案内された。
昔ながらの木の大きな樽で作られる酒の香りで蔵は包まれている。
「弱いと、おるだけで酔います」
蔵元の当主は冗談を飛ばした。
「こういう天然の素材で作られたものやから、人体に刺激が少ないんとちゃいますかね」
さやかは新しい世界を見たような気がした。