【完】『けったいなひとびと』
まず作られたのは、例の蔵元の酒を使った化粧水である。
試作品が出来た段階で試用という話になったのだが、なかなか実験台になってくれる人がいない。
そのとき。
「私、やります!」
と手をあげたのは舞であった。
「矢田堀くん…」
「私これで結構、肌弱いんですよね」
そういえば舞がアイドルを辞めたのは、メイクで肌荒れがひどくなって、炎症を起こす頻度が増えたのがきっかけであった。
「私みたいに肌が弱い人も使えるようにってのが、この化粧水ですもんね」
ということで、舞が一ヶ月使ってデータを取ることになった。
「赤くなったり痒くなったら中止してくださいね」
という医師のアドバイスのもと、臨床試験が始まったのである。