【完】『けったいなひとびと』

まず作られたのは、例の蔵元の酒を使った化粧水である。

試作品が出来た段階で試用という話になったのだが、なかなか実験台になってくれる人がいない。

そのとき。

「私、やります!」

と手をあげたのは舞であった。

「矢田堀くん…」

「私これで結構、肌弱いんですよね」

そういえば舞がアイドルを辞めたのは、メイクで肌荒れがひどくなって、炎症を起こす頻度が増えたのがきっかけであった。

「私みたいに肌が弱い人も使えるようにってのが、この化粧水ですもんね」

ということで、舞が一ヶ月使ってデータを取ることになった。

「赤くなったり痒くなったら中止してくださいね」

という医師のアドバイスのもと、臨床試験が始まったのである。



< 102 / 128 >

この作品をシェア

pagetop