【完】『けったいなひとびと』
裏方
ヒット商品が出ると企業は強い。
いわゆる『京の水』などのシリーズはその後もいくつか商品が発売され、酒蔵の協力を得て売り上げが伸びると、落ち込んでいた業績も回復しはじめた。
こうなると市場やビジネス業界では、
「花輪屋もそろそろ株式を上場しても良いのでは」
という声が上がったのだが、
「上場はしない」
というさやかの方針は変わらなかった。
「別に株式を上場しなくても、それで会社がつぶれる訳ではない」
と言い、
「だいいち文化文政の初代の頃には証券取引所もなかったけどつぶれなかった」
とまで言い放ち、
「老舗で株式を上場して窮地に立たされた企業は多数ある」
と持論をぶちかまし、
「上場しないことで得るメリットのほうがむしろある」
と、理由をるると述べて上場をしなかった。