【完】『けったいなひとびと』
こうしたブレない姿勢は、
「女の分際で生意気だ」
という否定的な意見もあるにはあったものの、大多数が、
「社長がブレないでいるから部下は心配なく働ける」
という肯定的な意見で、さやかは世間から注目を浴びる存在になり始めていた。
しかし。
「やっぱり伊福部くんが戻って来ないことにはねぇ」
と、スケジュールの調整がスムーズに行かないことを、さやかは気にかけていた。
そうしたなか。
ヒット商品の記者発表が初めておこなわれることが提案された。
案を出したのは提携先の伏見の酒蔵で、
「これからは老舗でも発信してゆかな、おいてかれまっせ」
という、酒蔵の当主からの発案である。
「あのご当主、頭が柔軟だなぁ」
とさやかが言ったのは老舗だからではない。
酒蔵の当主が本間顧問より歳上の戦前生まれであったからである。
「よし、やってみるか」
ということになり、まずはツイッターやフェイスブックを使うところから始まったのである。