【完】『けったいなひとびと』
株式は上場しないがネットを巧みに使うといった戦略は、さやかが前々からやろうとしていた腹案ではあった。
が。
背中を押したのは駿である。
「まぁ何でも試してみるっちゅうのはえぇこっちゃと思います」
とは秘書室長の頃から言われてはいたが、
「やらんで後悔するより、やって失敗を学ぶほうがどんだけ値打ちのあることか」
と言われ、さやかは度胸試しのつもりで動くことにしたのである。
いざ動くと。
もともと秀島さやかの評価が割と良かったところに来て、例の『京の水』シリーズのヒットも重なって、
「セレブだから天狗になってもおかしくないのに、ちっとも偉ぶらない」
といった気性が評価されていた。
事実。
さやかは運転手つきの車は「車酔いしやすいから」と言って乗らず、ずっと折り畳み式の自転車で通勤していたのである。