【完】『けったいなひとびと』

そうしたなか。

新商品の記者発表の日が来た。

こういう場合、前なら駿が裏方で取り仕切り、うるさ方の記者をうまくあしらうのであるが、この場に駿はいない。

仕方なく広報から派遣された紫が仕切ったのだが、

「伊福部くん全部こんなに大変な仕事仕切ってたんだ…」

と、やってみて初めてその労苦が分かったのである。

当然だが。

記者たちからは例の護関連の騒動に関してしつこく訊かれ、それに対してさやかは半泣きになりながらも、臆せず答える。

この様子がまた、

「またマスコミの男どもが女社長いじめてる」

といった感じに受け取られ、ネットのユーザーとマスメディアとの戦いになってゆく。

こうしたことが。

日頃は人前に出るのが苦手なさやかを、余計人前に出づらくしているという側面はあった。



< 108 / 128 >

この作品をシェア

pagetop