【完】『けったいなひとびと』
そうしたなか。
新商品の記者発表の日が来た。
こういう場合、前なら駿が裏方で取り仕切り、うるさ方の記者をうまくあしらうのであるが、この場に駿はいない。
仕方なく広報から派遣された紫が仕切ったのだが、
「伊福部くん全部こんなに大変な仕事仕切ってたんだ…」
と、やってみて初めてその労苦が分かったのである。
当然だが。
記者たちからは例の護関連の騒動に関してしつこく訊かれ、それに対してさやかは半泣きになりながらも、臆せず答える。
この様子がまた、
「またマスコミの男どもが女社長いじめてる」
といった感じに受け取られ、ネットのユーザーとマスメディアとの戦いになってゆく。
こうしたことが。
日頃は人前に出るのが苦手なさやかを、余計人前に出づらくしているという側面はあった。