【完】『けったいなひとびと』
しかも不運というのは。
不思議なことになぜか連鎖するもので、
「おやっさんが倒れた」
という電話が、駿のもとにかかってきたのである。
「まぁ考えてみたら、うちのオトンもう喜寿に近いしな」
駿はシレッとした顔で涼しく言うのだが、さやかや花輪屋の面々からすると一大事である。
再び駿は西陣へ戻った。
「…どうしたらいいんだろ?」
普段ほとんど悩まないさやかが、こと駿のことになるとどうしたらいいのかわからなくなってしまう。
「それ、恋ですね」
さとみはきっぱり言い切ってみせた。
新米の頃からさやかのかたわらで支えてきたさとみにすれば、
「そりゃ社長だって愛だの恋だのあるでしょうよ」
と、理解はあった。
むしろ逆に、
「手につかなくなって仕事が止まるのだけは勘弁してほしい」
という本音もないではない。