【完】『けったいなひとびと』
奇策
他方で。
さやかは駿の扱いで、どうしたらいいのか考え続けていた。
ふと応接のセットの脇にあった、一冊の新聞に目が留まる。
そこには、
「買収」
といった文字が見えた。
「…そうだ、買っちゃえばいいんだ」
小さく漏らした。
こうなるとさやかは行動が早く、経理部を呼んだ。
「今、私のフリーで動かせるお金っていくらあるの?」
「今のところ予備費で三千万か四千万はあるかと思いますが」
「それで、ちょっと買収の手付金にしようと思うんだけど…」
「どこの企業を押さえるのかですが?」
「お酒の小売りメーカーなんだけどね」
「…それはどうかと。稟議が要ると思われます」
「うーん、ダメならいい。じゃあ私がポケットマネーでそこ買うから。ならいいでしょ?」
さやかは自腹を切る覚悟もあったらしい。