【完】『けったいなひとびと』
肝が据わったときのさやかほど、剛胆なものはなかったかも分からない。
秘書主任になったさとみですら、
「そんな…」
と開いた口が塞がらなかったが、それはさやかが財布を開いたあとの話である。
数日して。
すべての手続きを完了させると、
「私、ちょっと大きな買い物させてもらったから」
と言った。
だがこの段階では。
さとみも、舞も、また広報部の紫も、マンションか車を買ったぐらいにしか思っていなかったようであった。
ともあれ。
クリスマス近くなって、さやかは駿を西陣から、
「火急の要件が出来たので、すぐ東京へ来るように」
と、いつになく珍しい命令調の通牒が来たのである。