【完】『けったいなひとびと』
そうやって。
少しばかり待っていると、さやかがいつもながらの早足でスタスタと歩いて来た。
「あ、伊福部くんおはよー」
「おはようさんです」
「とりあえずちょっと社長室まで来て」
「はぁ」
トランクを引きずったまま社長室に入ると、
「実はね」
とさやかは顔を近づけ、
「…伊福部くん、買っちゃった」
駿は一瞬よくわからなかったようで、いぶかった顔になってから、
「どこか、オフィスでも用意したんでっか?」
「…伊福部くんの酒屋を、買収したの」
「はぁ…えぇっ?!」
駿は思わずさやかの顔を二度見した。
「…こらまたえらいごんたなこと、しはりましたなぁ」
駿は目を丸くした。