【完】『けったいなひとびと』
しかし一度だけバレそうになったことがある。
それは駿のケータハムセブンにさやかが同乗して出勤してきた際、
「ダァ忘れ物だよ」
と言ったのを聞いていたのがあったらしいのだが、
「さぁ…何しろここのビルには、ようけ外資系の企業とかいてますからね、ダァさんとかそういう人いてるんとちゃいます?」
と駿はいつもの京都弁でひょうひょうと、そらとぼけた言い回しをした。
このときばかりは、
「ホンマに頼むわー」
と、あとからこぼしている。
これで。
業績は悪くなった訳ではなく、むしろ現状維持から少し上昇ぎみといった様子で、
「花輪屋の秀島社長、最近きれいになりましたね」
と言われると、
「えぇ、うちの化粧品の効果です」
などと軽い冗句も言える余裕も出てきた。