【完】『けったいなひとびと』
折しも。
「確か明日はテレビだったよね?」
「はい」
さやかは秋から、情報番組のコメンテーターとして、生放送に週に一度の頻度で出演している。
「…まさか」
「大丈夫、私に任せといて」
さやかには何か思うところがあったようであるが、駿にはそれが皆目わからず、
「溜め息ばっかりさっきからついて、室長どうしたんですか?」
と舞に指摘されるほど落ち着かなかったらしい。
翌朝。
さやかは直行でテレビ局のスタジオに入った。
情報番組の司会はベテランのアナウンサーで、さやかとは父と娘のような間柄である。
「実は話が」
とさやかは、生放送に少しだけ時間が欲しいと交渉をしてみた。
「…何かあるんだね」
「はい」
さやかの強い視線に、どうやらただならない覚悟だけは読み取れたようで、
「ちょっとプロデューサー呼んでくれないかな?」
とあわただしくプロデューサーが呼び出されたのであった。