【完】『けったいなひとびと』

「…熱愛の報道についてですが、あれは事実です」

この言葉に、居並んでいたキャスターやアナウンサーは驚きを隠せなかったが、

「相手は一般の方です」

これにはさとみも駿のことだと、すぐ気づいたようである。

さやかは意に介さず、

「まぁ私ももういい歳した女ですから、彼氏ぐらいいても隠すようなことでもないんですけど、報道が出ましたので、この際はっきりさせておこうと思いまして、お時間をいただきました」

どこか誇らかに、それでいて覚悟の据わったような、さやかはそういった空気を醸し出していた。

「はっきり言えるのは、彼はとても私を大切にしてくれるということ、そして私も彼を大切だと思っているということです」

どうか温かく見守っていただければ、と思います…そう締め括って、さやかは深々とお辞儀をした。

少しだけ。

沈黙が流れた。

が、すぐにスタジオじゅう拍手がわいて、

「…こんなにいさぎよい交際宣言も珍しいです」

どうか温かく見守ってもらいたいと思います、と締めてから、番組はコマーシャルに入った。



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