【完】『けったいなひとびと』
駿はポケットからハンカチを出して、
「五十嵐くん」
と肩をちょんちょんと指で突いて、さとみに手渡した。
「具合が良くないなら早退した方がえぇで」
体裁もあろうからと、体調不良という風にしておきたかったらしい。
しかし。
「室長…うっ、うっ…」
こらえきれずに泣きじゃくってしまっている。
「まぁ話だけでも聞こか」
駿は階段に座っていた、さとみの隣に腰をおろした。
泣き止むのを待ってから、
「いったいどないしたんや…堤くんに叱られたんか?」
秘書室でたまに、さとみが晴加に失敗を怒られているのは知っている。
「違うんです」
「…ほな、誰かセクハラか?」
「いえ」
すると、泣き腫らした目でさとみは訥々と仔細を語り始めた。