【完】『けったいなひとびと』
「ま、今度なんぞ言うてきたら俺が仇討ったる。部下の仇は上司の仇や」
意外に義侠心も駿は持っているらしい。
その頃。
受付では別の問題が出来していた。
駿の同期で広報の三浦紫が、執拗な来客に絡まれていたのである。
「お前らはそもそも、うちがなかったら仕事がないんだぞ」
昼間から酒の臭いを漂わせ、創業家の御曹司の本間新吾が、紫にしつこくデートを要求していたのである。
創業家の本間家は経営からは退いているものの、筆頭株主として隠然たる力をいまだに握り、その御曹司である新吾は、ことあるごとに花輪屋に来てはトラブルを起こしていた。
「ちょっとぐらいお茶に付き合ったって、減るもんじゃないだろ」
「あの、勤務中なので」
この日は運悪くテレビの取材が来る日で広報の紫は待っていたのだが、そこへ新吾が来て問題が起きている。
気づいた警備員が取り押さえた。
「おいっ…俺はここの創業家だぞっ…筆頭株主だぞ!」
警備員が叫ぶ新吾を勾引してゆく。
「…全く、あんなのが創業家だなんて」
紫はこぼしながら、着衣を直した。