【完】『けったいなひとびと』
午後になって。
社長室からさとみを連れて出たさやかは、二階のコンビニでサンドイッチとコーヒーを買ってロビーに出た。
するとそこへ。
エントランスの車止めに一台の黒塗りの車が停まった。
降りてきたスーツ姿の男はいきなり、
「秀島くんじゃないか」
と声をあげた。
さやかは振り向いた。
近眼なのでバッグから眼鏡を出してかけると、
「やっぱり秀島くんだ」
スーツの男は近づいてきた。
「…どうも」
軽い会釈だけをした。
「さとみちゃん、急ぐよ」
「はい」
二人は慌ただしくタクシーに乗り込んで、その場から去った。
残された男は、
「…何を急ぐんだか」
肩をすくめてロビーへ入って行く。