【完】『けったいなひとびと』

タクシーの車中では、

「あんなイケメン、世の中にいるもんなんですねー」

いつもそばにいるのは、普通よりは鼻も隆く眼もくりっとしていて男前だが、どことなく武骨な顔をした駿である。

なので。

さとみにすれば護の容貌は目の保養といった程度であったらしいが、

「…まさかあいつが東京に来るとは」

さやかは浮かない面持ちをした。

「知ってるんですか?」

「少しね」

さやかはぽつりぽつりと話し始めた。

「あの人、弁護士なんだけどさ」

竹内護(まもる)。

さやかとはシカゴの大学時代の知り合いであったらしく、

「同じ日本人だから、まぁ知らない間柄ではなかったんだけど、ちょっとね」

というのも。

何度かさやかにアプローチをしてきたのだが、どうも生理的に苦手な面があったようで、

「それで結局、付き合わなかったんだけどね」

「えーっ!」

もったいない…とさとみは開いたままの口を手で塞いだ。



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